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2025.01.11 |

指先の定着液がぬるぬるとして溶ける皮膚として

 嫌なこところへ行くときに、わたしは髪にいい匂いのする化粧水を吹きつけ、青いアンギン織のマフラーを巻き、がまの油を指先に塗りこむ。
 化粧水はすごく好きな友だちがくれたので、マフラーは母親が若いころにしていたのをもらったので、がまの油はばあちゃんが、肌が乾燥するといったら送ってくれた。
 わたしはそうやって結界をはる。
 わたしの外部、まるでわたしが無価値であるとでもいうようなもの、わたしの嫌いなもの、わたしを制圧しようとするもの、わたしを押しつぶすもの、わたしが怖いもの。わたしが恐れているところのもの。そういうものから、そうやって結界をはる。
 
 すごく不安なとき、わたしは持ち物に名前を書く。
 帽子、ふでばこ、ノート、本。ひとつひとつに、丁寧に名を入れていく。わたしのもの。わたしであるもの。わたしを構成するもの。わたしをわたしであらしめるもの。わたしの存在を、担保してくれるところのものたち。わたしのもの。
 
 わたしはそうやって、自分の存在を定着する。逃げ出さないように、飛んでいかないように、消えてしまわないように。かなしく。そうやって定着する。幾重にも幾重にも厚い服を着込んでゆくように、そうやってわたしを定着する。

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2009.12.07 | Comments(0) | Trackback() | 未選択

手のひらの上の憎悪のようなものから

 書けば軽くなるかと思ったが、ぜんぜん軽くならない。むしろ、かつて吐き出した自分の言葉たちが、気がつけば粘り気を帯びて、ねたねたと体に絡む。涙におぼれる、ならまだいい。涙はさらさらしているし、冷たいから気持ちがいい。わたしの言葉は粘る、粘る、粘る。甘くない水飴のようだ。吐き出すほどに身動きが取れなくなる。足をとられてひれ伏してしまいそう。
 我ながら、つまらないものにかかずらった思う。そんなもの、脱ぎ捨てて、投げ捨てて、さっさかと駆け去ってゆけばいいのだ。そうしたところで、だれも責めはしないだろう。さっさか。さっさか。つまらない。つまらないことだ。つまらないことばかりだ。つまらないことばかりに、わたしはかかずらう。
 深夜にテレビを見ていたら、画面が消えてカラーパターンのテストに切り替わった。びーーーーーーーという、どこまでもつづく均一な音を聞いていると、どこまでもつづく砂漠のうえの地平線を思う。どこまでつづくのか。これはどこまでつづくのか。喉の奥の声門をほそくほそく締め上げて、こうもりの声で叫んだ。夜は変わらず、寂としていた。

2009.12.03 | Comments(0) | Trackback() | 未選択

質問に答える。質問に気がつかないふりをする。

 やってしまった。と、思うことがある。 わたしの場合それは”言ってしまった”のケースが断然多いのだが、とにかくしまった、しまった、しまったである。
 そんなつもりなかったのに、やってしまう。そんなこと思ってもなかったのに、言ってしまう。
 しまった、しまったと思いながら、けれどどうして思ってもみないことが口から出るだろうか。多分、ほんとは心のどこかで思ってるから、出るんだろう。
 「そんなつもりなかったの」とか、そういうのはずるいような気がする。確かに、言葉や行為、外界に表されたものは、相手の受け取り方しだいで、本人の意思を裏切りながら一人歩きしていくことがままある。けどそれもみんなひっくるめて、自分のものだ。相手に誤解させるような関係性しかつくれなかったことを含めて、みんなすべて、自分に還る。
 キャンパスでたまたまあった友人は、べたべたしていた。べたべたとわたしに寄りかかってきて、わたしがそれを受け入れるのを、あたりまえであると思っているようだった。滝のようなおしゃべりに、げんなりして別れて、考えた。なんで彼女がわたしをそんな風にあつかうのか考えて、それはわたしがさみしかったからだと思った。そのころわたしはさみしかったから、彼女の依存が心地よかったのだ。それで際限なく、むさぼるように彼女を受け入れたのだった。
 イチョウの葉っぱを踏みつけながら、ごめんなさいだなぁと思った。ぐりぐりと踏みつけつづけたら、イチョウの葉っぱは引き攣れるように維管束にそって裂けた。
 売り言葉も、買い言葉も、その場限りの言い訳も。目交ぜまでもが、みなわたしの欲望と深くつながりながら生み出される。「そんなつもりなかったの」と、いえることなど、何一つないのだ。わたしはわたしでしかなく、思い描いた”本当の”わたしはあまりに遠い。
 「そんなつもりなかった」という時の、現実と想定の落差は、”本当の自分”と事実としての自分の落差か。そんなものか、そんなものか、で受け入れられるといいのにと、”そんなはずかなかった”失敗に、悶絶しながら考えた。




>風見さま

なんと。拍手ありがとうございます。はげみになっておりますともー。
実はいま、自宅のパソをがネットに接続できておらず、大学のパソで日記だけ書いているというなさけない状態であります。
リンクありがとうございました。自宅のネット環境が回復しましたら、お邪魔させてもらいます。

2009.12.02 | Comments(1) | Trackback() | 未選択

ストイコビッチの一人相撲

 夜行バスの悪いところ。寝れないし、本読んだりして気をそらすこともできないので、嫌なことばかり考える。乗車中のお客さんが、窓をつきやぶって自殺ってのを聞いたことがないのが不思議なくらいだと思う。あそこは魔のスポットだ。
 暗い車内が悪いのか、揺れる密閉空間がたまらないのか。思考の方向はねじねじと内側に向かってつきすすみ、見ようとしなかったことや、考えたくなかったことを、ごりごり引きずりだしてくる。
 今回は5時間ぐらい悶絶したあと、こんな状況でまだ生きてるなんてエライじゃんわたし!と、変な居直り方をした。居直る頃にはもう夜が明けはじめていた。一晩もずいぶん不毛なことをしたものだと愕然としたがとりあえず、この自己肯定は汎用性があっていいなぁと、朝日を浴びつつ自画自賛してみた。

2009.11.29 | Comments(0) | Trackback() | 未選択

花のさかりの野の道を、踏みしだいては山に入る

  商店街でネギを買っていたら、ゴジラのような咆哮が聞こえた。何事かと思ってみてみたら、四歳児ぐらいの男の子が大きな泣き声をあげながら、父親と思しき男の人に突進するところだった。父親は、なじみの店主と立ち話でもしていたらしい。急に飛び込んできた子どもを見ると、あわてて抱き上げて、よしよしというふうに揺すった。子どもを自分の顔が見える位置までもってきて、男の子の顔をのぞきこみながら揺すった。男の子は父親のほっぺたをぺちぺちとさわりながら、うぇうぇっとむせるようにいつまでもしゃくりあげている。
 いいなぁ、と思った。あんなふうに抱きとめてもらったら、さぞ安心するだろう。
 全身全霊でおめきながら、誰かに自分のことを気づいてもらおうとしたことなんか、なかった気がする。ものごころつく前は知らないけれど、夜泣きの少ない、わがままを言わぬ子ではあったらしい。逆に弟はオレさま帝王のきかん気のつよいこで、気に入らぬことがあるとずいぶんとぐずったり、暴れたり、泣いたりした。3つ年上のわたしはそれを、別世界のできごとのようにながめていた。とくに嫉妬もせず、こういう生き物もいるのだなぁと、思って見ていたような気がする。いま思うと、もうちっとぐらい、わがままを言っておけばよかった気がする。
 そういうふうに、全身で誰かを呼ぶことができて、容易に全ての存在肯定をしてもらえる時期ってのはちいさな子どもの頃ぐらいしかないように思う。惜しいことをしたような気がするが、もう一度こどもをやらせてもらったところで、結局そんなことをやらないまに終わるかもしれない。
 恋愛でも何でも、いまでも本当にしたいんだったら、そうやって誰かを求めればいいのだ。実も世もなく、泣いて泣いて求めればいいのだ。けどそれをしないのは、結局のところそういうのが、そこまではやりたくないからなんだろう。
 高校のとき、現代文を教えてくれていたガタイのいい禿頭の先生に「おまえは『こころ』にでてくるKに似ている」と言われたことを思い出す。当時、断固、先生派であったわたしが訳をうかがいましょうかと食ってかかると「だって、お前。かっこわるいことしたくないだろ」といって、腹のそこから出ている大きな声でガハハハハと磊落に笑った。
 今ならわかる。いまさらわかる。
 なんだ。わたしは昔もいまも、思いのほかに生きたいように生きてきたらしい。Kも多分、生きたいように生きたら、自殺だったと、おそらくそれだけだ。哀れむことも、罵ることも、悔いることも。そんなことはなんら必要はなくて、ただ、それだけだなぁと思った。

2009.11.27 | Comments(0) | Trackback() | 未選択

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