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2025.01.11 |

南無阿弥陀仏のエクスタシー

 「あなたは将来、アンパンにシールを貼る仕事をするしかないような人間だ」
という大変にありがたいお言葉をいただく。「あなたのことを思うから」言ってくれたらしいが、どうも彼女はわたしの話を3割ぐらいしか聞いてくれていないような気がするので、とても微妙だ。

 「あなたのために」と言われたことのある状況を思い返すに、そういう言い回しをする奴は、たいがい嫌な奴だったなぁと思う。ちなみにわたしも使ったことがあるが、その状況を思い返してみても、やはり自分もじつに嫌な奴であったと思う。たいへん、ごめんなさい。
 「あなたのために」という言葉は、自分の言ったことを正当化しようとするときによくでてくる。意見なら意見、文句なら文句で言えば相手も受け入れるなり、反論するなりできるのに「あなたのために」「あなたのために」といわれると、ぐぅの根もでない。素直に受けいれればそれでよし、受け入れなければ「思いやりのある助言」を聞く耳もたない相手を悪者にできる。自分も使ったことがあるから分かるけど、どちらに転んでも負けないですむという、実に巧妙な言葉だ。ずるいなぁ。わたしも彼女も、使う人はみんなずるい奴だなぁと思う。
 本当に相手のことを思っているなら、そんな言葉は使わないはずだ。相手を深く傷つけるかもしれない言葉を、自分を安全地帯においておきながら発しようとするなんて、卑怯であることはなはだしい。もし、相手を思うあまりに言うならば、相手の痛みの届く距離で、自身も傷つく覚悟で言うだろう。それがどんな感情からでていても、相手を痛めつける可能性があるならば、同じだけの痛みを自分も引き受けなくていはいけないんじゃなかろうか。それが、言葉を使うということの責任だ。
 だから、「あなたのために言っているのに」と昔、わたしは腹を立てたけど、あなたじゃなくて自分のほうがよっぽど大事だったから、そんな言葉をつかったのだなと、ああ、悪いことをしたと、今更のように思った。嫌なことを、やられてみないとわからなかった。

 ちなみにアンパンの前には、「わたしはぜんぜん平気だけど、あなたは人から怖いと思われると思うの。それできっとみんなに嫌われるわ」がくっついている。ほんとうにわたしのことが怖くて嫌いなのは、あなたなんじゃないですか?とたずねればよかったのだと気がついたのは、二日後、自宅の風呂の中でだ。湯船で悶絶躄地してみたが、見事に後の祭りであった。
 彼女は自分が「自分は特別な人間だから、どこへ行っても人とはうまくやれない」ことを誇っているような人で、「あなたはわたしと違ってフツーだから」が彼女の口癖だった。その彼女が、しかし、わたしを批判しようとしたときにもちだしたのは「みんな」という言葉だ。ああ、もう、なにをやっているのだ。
 とりあえずメールで、「わたしは○○さんより、ぜんぜんフツーのはずなのに残念です!もっとフツーになれるようにがんばります!!!」と送ってみた。返信はまだ来ない。

 来ない返信をイライラと待つそのうちに、なんだかすごく切ないようになってきて、「ためになりました。懲りずにまた遊んでくださいね!」という文面を打ってみた。すこし考えてそのメールは送信せずに消した。やっぱり、返信はまだ来ない。

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2010.01.11 | Comments(0) | Trackback() | 未選択

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